黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
まともな調理器具がほぼない。
あっても100均で買ったのかという程度の簡易なまな板と包丁くらいだ。

 戻ってくるときに、近くにスーパーあるのか晴貴さんに聞いたのだ。

『スーパー?
コンビニなら向かいのマンションの一階にあるけど……?』

と答えられ、薄々そんな気はしていた。

そういう人なので調理器具も調味料どころか食材もない。
ただ、冷凍庫には美しく冷凍のお弁当が並んでいた。

スーパーへ行けば程度によってはお鍋くらい手に入りそうだが、携帯がないのでそのスーパーがどこにあるのか検索もできない。

「……詰んだ」

クッションを抱き、こてっとソファーの上で倒れる。
とりあえずファックス兼用の電話があるから、なにかあったらそれで連絡をと電話番号のメモは渡されていた。

ふと、テーブルの上に置いてあるリモコンが目に入った。
そこには私が入っている動画配信サイトのボタンもある。

「そっか。
テレビで観られるんだ」

前に実家に帰ったとき、テレビを買い替えた父がなぜか得意げに自慢していた。
晴貴さんのうちのテレビも対応しているらしい。
起き上がってスイッチを入れる。
< 116 / 287 >

この作品をシェア

pagetop