黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
腕時計で時間を確認し、もうその気なのか彼が私の手を引っ張るがそういう問題ではない。

「いきなり今からとか無理です!」

「無理じゃない、余裕で間に合う。
僕が書類を作るから、間違いもない」

晴貴さんはドヤ顔だが、論点がズレている。

「それともあれか、僕と結婚するのは嫌なのか」

「うっ」

じっと彼に見下ろされ、たじろいだ。

「い、嫌ではない、です」

だらだらと変な汗を掻きながら目を逸らした。
結婚したくないかと聞かれれば、こんなに優しくて私を気遣ってくれる晴貴さんとならしたいに決まっている。
しかし物事には順番とかいろいろあるのだ。

「でも、ご両親にご挨拶とか、結婚前に踏まなければいけない段階がいくつかありますし」

これで納得してくれと彼を見つめる。

「ふむ」

軽く握った手を顎に当てて彼はなにやら考え込んでいるが、そんなに悩むことがどこにあったのだろうか。

「まあ、確かに夏初の言うとおりだな。
近いうちに……そうだな。
夏初の次の仕事が決まる前にご両親にご挨拶へ行こう」

「はい、そうして……ハイ?」

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