黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
受付の女性がにっこりと笑い、それだけで視線が泳いだ。

「かっ、『鹿野谷法律事務所』の陽川さ、様と約束があっ、あって」

緊張してたったそれだけ告げるのに顔が熱を持つ。

「かしこまりました。
こちらで入館、お願いいたします」

不審者丸出しの私など気にすることなく、受付の方はごく普通に入館証を渡してきた。

「あ、ありがとう、ございます」

ぎくしゃくとそれを受け取り、事前に晴貴さんから聞いていた階へとエレベーターで上がる。
ドアが開き、降りて見えた壁には【鹿野谷法律事務所KANOYA & ASSOCIATES】とお洒落な看板が掛かっていた。

「受付……」

ここでも受付を探しておろおろする。

「なーつはっ」

奥へ進んでいいのか躊躇していたら、ひょっこり晴貴さんが顔を出した。

「時間五分前。
偉いな」

彼は私の背中を押して中へと促しながら褒めてきたが、約束の時間五分前は当たり前では?

「迷わなかったか?」

「だ、大丈夫です」

実は迷うのを見越して出たせいで早く到着し、ビルの下にある公園のようなところで三十分も時間を潰していたなんて言えない。

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