黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
晴貴さんは着信履歴とメッセージの画面のスクショを撮り、自分の携帯に送っていた。

「着信拒否とブロックの設定はしたけど、たぶんまたかかってくると思う」

「……なん、で」

私から出た声は酷く掠れていたうえに、聞き取れないほど小さかった。

「着信拒否されても別の携帯からかければいいだけの問題だからな」

呆れるように晴貴さんが肩を竦める。

「……どう、して」

そこまでして、会社になんの得があるのだろう?
私には理解できない。

「よくわからない対面とプライドのためさ。
信じられないとは思うが、こういう会社はよくある」

自分の勤めていた会社が常識の通じないところだったのだとようやく悟った。
いや、会社にいた頃からなんとなくそんな気がしていたが、気づかないフリをしていたのは私だ。
きっとそのツケが回ってきたのだ。

「夏初は悪くない。
悪くないよ」

私の考えに気づいたのか、彼が慰めるように抱きしめてくる。

「でも」

「会社から思考を奪われていたんだ。
だから、夏初は悪くない」

晴貴さんはそう言ってくれるが、思考を停止させなにも考えなかった自分が悪い自覚がある。
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