黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
会社を相手に戦った人だっているのに、私はなにもしなかった。

そんな私の心に、晴貴さんの言葉が麻薬のように染みていく。

私が悪かったんじゃない、会社が悪かったんだ。

違うのはわかっている、それでも弱っている私は彼の言葉を信じたかった。

「携帯は僕が預かっておく。
仕事を整理してくるから、明日か明後日には新しい携帯を買いに行こう」

私が落ち着いたのを見計らい、彼は身体を離して顔をのぞきふふっと微笑んだ。

「……はい」

その優しい顔を見てほっと気が緩む。

「今日はもう、ゆっくり寝ていろ。
病院も明日、予約を入れておく」

「……よろしくお願いします」

私を寝かせ、促すようにゆっくり髪を撫でる手が気持ちよくて、次第に眠りに落ちていく。

「全部、僕に任せて夏初はなにもしなくていい」

優しい口づけを最後に、私の意識は眠りの帳の向こうへ閉ざされた。



翌日、晴貴さんに付き添われて再び訪れた病院で、追加のお薬が出された。

「今日もゆっくりしてろ。
医者にも今は休息が必要って言われただろ」

「はい……」

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