黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
彼がさらに情けないような、なんとも言えない顔になる。

「その。
……座っても?」

視線で私の隣を指し、反応をうかがうように彼は尋ねてきた。
無遠慮に座らず、こうやって許可を取ってくるのは断然、好感度が高い。

「ええ」

「よかった」

ぱっと笑った彼は先ほどの冷たい顔とは違い、人懐っこく見えた。
そのせいか二つ三つ、幼くなったように感じる。

カウンターからシャンパングラスをふたつ掴んできて、彼は隣に座った。

「よかったらどうぞ」

「ありがとうございます」

お礼を言い、差し出されたグラスを受け取る。
彼はまるで先ほどの憂さを晴らすかのごとく、くいっと一気に飲み干した。

「当事務所の弁護士が迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありません」

改めて彼が詫びてくるが、悪いのは彼ではなくあの男だ。
それに彼があのタイミングで声をかけてくれたおかげで助かった。

「いえ、悪いのはあなたではないので。
でも、よかったんですか?」

あの様子だとあとで、当たられたりしないだろうかと心配になる。

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