黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「僕は部下に仕事を押しつけてこんなところに来たりしませんし、もちろん仕事も終わらせています」

質問の意図からは外れているが、あの男と同じ事務所の人間とは思えないほど彼はきちんとしているようだ。

「しかし、うまくいってよかった」

先ほどの男の様子を思い出しているのか、彼がおかしそうに喉を鳴らして笑う。

「電話で怒鳴ってるのを見て、はったりかましたんですよ。
でも、信じたみたいで」

「え、それって……」

「所長から電話があったって嘘をついたんです」

戻って部下の方だけでは、あの男は切れて怒鳴り散らすのではないかと心配になったが。

「もちろん、所長にも連絡を入れてあります。
すぐに残っている職員を帰らせると言っていたので今頃、誰もいない事務所で途方に暮れているでしょうね。
あの人、ひとりじゃなにもできないから」

想像したら私もおかしくなってきて、笑いが込み上がってくる。

「えー、ひど……くない、ですね」

ケラケラと笑い、渇いた喉にシャンパンを流し込んだ。

「鹿野谷を訴えます?
お手伝いしますよ」

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