黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
所長はにっこりと笑ったがその目は本気だった。
この上司にしてこの部下なのだと納得した。

ビルの一階まで晴貴さんが送ってくれた。

「よかったら近くで待ってて。
今日は早く上がるから就職祝いで美味しいもの、食べに行こう」

彼が携帯の画面に指を走らせたすぐあと、私の携帯が通知音を立てる。
確認すると晴貴さんから使っているバーコード払いに送金されていた。

「就職祝いとか大げさです。
晩ごはん、作りますよ」

「いいから。
僕の気持ち。
それにほら、会社辞めてから大変だっただろ?
だからこれくらいさせて」

周囲を見渡して誰も見ていないのを確認し、彼は私の額に口づけを落としてきた。

「ううっ。
気持ちは嬉しいので、じゃあ。
でもこのお金はあとで、絶対に返しますから!」

「えー、いいよー」

不満げに彼は唇を尖らせてみせたが、か、可愛くない……とも。

「それで新しい通勤着でも買ってくれ。
なにしろうちの事務所の女性は全員、オシャレだからな」

「うっ」

今まで大手量販店の服で済ませていた私としてはなに言えなくなる。
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