黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
スマートな動作でスーツの内ポケットから名刺入れを取り出し、彼は一枚抜いて渡してきた。
そこには弁護士の肩書きとともに陽川(ひかわ)晴貴(はるき)と名前が書いてあった。

「陽川さんは弁護士さん……なんですよね?」

あの男を先輩と呼んでいたし、弁護士なのは間違いないがつい疑問形になってしまう。
彼――陽川さんのスーツの襟には弁護士を示すバッチがついていなかった。

「ああ」

私の気持ちに気づいたのか、ちらりと彼の視線が自分の襟へと向く。

「こういうところで弁護士だと知られると、面倒なんです」

嫌そうに彼が顔を顰め、悟った。
きっと女性たちから安く……はいいほうで、タダで問題を解決してくれとか頼まれるのだろう。

「しかし、先ほどのあなたはなかなか痛快でした。
あの皮肉に気づいていない、鹿野谷も鈍いというか間抜けというか」

また陽川さんがおかしそうにというか、ツボにでも入ったのか今度はげらげらとお腹を抱えて笑い出し、顔が熱を持っていく。

「そんなに笑わなくても」

ふて腐れてそっぽを向き、グラスのシャンパンを飲み干した。

「すみません」

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