黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
スープボールから口を離し、彼が意地悪くにやりと笑う。

「ううっ。
お手柔らかによろしくお願いします……」

晴貴さんは完璧主義で気難しいと聞いた。
彼の要求に私は応えられるのか、そこはかとなく不安になった。

食事の後片付けをしたあと、晴貴さんから話があると言われた。
悪い予感がして落ち着かず、並んでソファーに座る。

「前の会社に内容証明を送ったが、期日を過ぎても返答がない。
催促をしても、だ。
それで訴訟に進もうと思うが、どうする?」

レンズの奥からじっと、彼が私を見つめる。

「訴訟に進むって裁判を起こすってことですか」

「そうだ」

彼が頷き、自分がとんでもないことをしようとしている気になった。

「別にそんな、大げさに考えなくていい。
借りた千円を返さないとかで起こす人だっている」

本当にそんな人がいるのか疑問だが、彼が冗談めかして言うものだから気が抜けた。

「それに所長は夏初の無実を信じているから採用を決めたが、他の会社なら横領の疑惑を理由に落とすかもしれない。
だから」

惨めな気持ちは味わわされたが、もう関わらないでいいなら我慢すれば済むことだと思っていた。
< 142 / 252 >

この作品をシェア

pagetop