黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
晴貴さんの口から私は天然とか出てきた気がするが、スルーしておこう。

「では、雇用条件を説明しますね」

所長が改まり、私に書類を渡してくる。

「あの」

「こちらとしては夜桜さんを採用したいと思います。
条件があえばぜひ、うちで働いていただきたい」

「ありがとうございます!」

所長がにっこりと笑った瞬間、立ち上がって勢いよく頭を下げていた。

「いえいえ。
夜桜さんのご希望に添えればいいんですが」

「どんな条件でも大丈夫です!」

雇ってもらえるなら別になんだってかまわない。
私はそんな気持ちだったが。

「夏初」

晴貴さんに厳しい声で名を呼ばれ、背筋が伸びる。

「〝どんな条件でも〟はダメだ。
受け入れられない条件はきちんと言え。
なんでも飲み込むとあとで、大変になる」

「……はい」

そのせいで前の会社と退職の件で揉めているのに学習しない自分が嫌になる。

契約が退職は三ヶ月前までに通知、後任に引き継ぎが終わるまでは退職は不可となっていて、会社はなかなか私の退職を認めないらしい。
さらに横領の件がはっきりするまではダメだと言われたという。

< 142 / 287 >

この作品をシェア

pagetop