黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
そこまでしてくるのなら一度、会社に戻って後任に引き継ぎをしたほうがいいのではないかと思ったものの。

『ただの口実だ。
どのみち違法だしね。
僕の夏初をこんなに困らせるとは、徹底的に叩いてやる……』
……と、晴貴さんの口から地獄の魔王のような笑い声が漏れ、私が怯えた。

丁寧に所長が条件を説明してくれる。
前の会社より休みもお給料もずっと多い。
給料などほぼ倍で驚いた。

「え、こんなにいただけるんですか……?」

「こんなにってほど多くないですよ。
資格手当て込みですし」

「あの資格に手当が付くんですか?」

「ええ」

所長は苦笑いしているが、やはり信じられない。

「先々、法律関係の資格も取っていただいて、パラリーガルとしても働いていただく期待値も込みになっています」

「はい」

資格を取る勉強は苦ではない。
それに今までのように停滞していく自分に諦めているよりもずっと、やりがいがある。

「夜桜さん。
うちで働く気はありますか」

姿勢を正し、真っ直ぐに所長は私を見た。
私も座り直し、背筋を伸ばす。

「はい。
よろしくお願いします」

できるだけ美しい姿勢で頭を下げた。
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