黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「え、当たり前じゃん?」

若い男性――栗下先生はなにを聞かれているのかわからないといったふうに何度か瞬きをした。

「だから座って、入力の続き」

「……はい」

にっこりと斉藤さんに笑われ、椅子に座りながらも栗下先生が怒っているんじゃないかとうかがっていた。
けれど彼はさも当たり前な感じでコピー用紙を補充している。

……ほんとにしなくていいんだ。

今まで男性社員の小間使いのように働いていた私からすれば、新鮮な驚きだった。

「夜桜さん。
お昼行こうか」

集中して入力していたら斉藤さんが声をかけてきて、頭を上げる。

「あの、でも、このままだと終わりそうにないので」

頑張って入力したが、まだ終わりは見えない。
お昼休みも返上しないと無理だろう。

「はいはい。
うちの事務所はね、休み時間はしっかり取るの。
だから一旦、終了」

私からマウスを奪い、彼女は目にも留まらぬ速さで保存からスリープ状態にしてしまった。

「えっ、でも」

「でもじゃない。
みんな待ってるし」

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