黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
ようやく落ち着いたのか、彼は眼鏡を軽く持ち上げて人差し指の背で笑いすぎて出た涙を拭った。

「でも、ああいうのはあまり、やらないほうがいい」

真剣に私へ忠告する声で、自然と背筋が伸びる。

「鹿野谷は気づかなかったからよかったですが、怒鳴るだけならまだしも、暴力を振るわれる場合もある」

「そう、ですね」

彼に指摘され、今頃になってひやっと肝が冷えた。

「だからといってなにもせずに部屋やホテルに連れ込まれるわけにもいきませんし、難しいところです」

陽川さんの眉間にはきつく皺が寄りかなり深刻そうだが、そういった相談もあるのだろうか。

「それでも助けを求められれば少なくとも僕は助けに入っていましたし、仮にあれが見ず知らずの男でも声をかけていました。
まあ、こんなの気休めにもなりませんけどね」

力なく彼が笑い、ここにいる男たちの中でも彼はまともな人なのだと思った。

「……ところで」

今まではきはきと話していたのが嘘のように視線を逸らし、彼が気まずそうにぽりぽりと人差し指で頬を掻く。

「僕は君に、興味を持ちまし、て」

視線を泳がせ、ぼそぼそと彼はしゃべり出した。

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