黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「もっとも、今はどこにあなたを連れていったら口説き落とせるか、真剣に考えていますけどね」

器用に彼が眼鏡の向こうで片目をつぶってみせ、心臓がきゅーっと甘く締まった。

マンションのロビーの端に立ち、ふたりでこれからどこに行くか相談する。

「お腹、空いてませんか」

眼鏡の奥から彼が、私の反応をうかがう。

「実は仕事が終わってそのまま連れていかれたもので、お腹が空いてるんですよね。
あそこ、ろくに食べるものがなかったですし」

それは私も同じ気持ちだった。
仕事が終わってすぐ準備があるからとレンタルルームに連れていかれ、他のメンバーとともに準備という名のおしゃべりに付き合わされた。
会場にはおつまみ程度の料理は並んでいたがそれで満たされるわけもなく、お腹はずっと空腹を訴えている。

「あの。
空いてます。
できればがっつりいきたいです」

こんな本音を言ったのは、彼がどこか気取らない空気を醸し出しているからかもしれない。
もし引かれたとしても、そのときは彼とはあわなかったというだけだ。
……少し、残念ではあるものの。

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