黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
よく考えずに就職してしまったのを早くも後悔しているところに、さらにトドメが刺される。

「まあ、陽川先生も気難しいところがあるから、大変だとは思うけど」

「……は?」

彼女としては慰めだったんだろうが、私には信じられなかった。
あの、晴貴さんが気難しい?
それはどこの晴貴さんだ?

「なんというか完璧主義?っていうか。
こっちで作った資料も気に入らないらしくて、すぐに自分で修正されるし。
で、どうせ修正するんだから面倒臭いって最初から自分で作ろうとなさるし」

「でも結局、忙しくて時間がなくてこっちに頼んでくるんだけど、あきらかに苦渋の決断って顔に出てるしねー」

「へ?」

そんな晴貴さんは私の知っている晴貴さんとは違ってますます混乱した。

「でも、悪い人じゃないのよ?
大企業の顧問とかなさってて忙しいのに、法テラスとか無料相談とか担当なさるの、嫌がるどころか進んでやるし」

「そうそう、誰かさんとは大違い!」

笑いが起き、私も釣られて笑う。
誰かさんとは憲吾先生のことだろう。

「ただ、よくも悪くも要求が高すぎるのね。
ご自分に対しても」

困ったように斉藤さんが笑う。
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