黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「いいですね。
近くに遅くまでやってる焼き肉屋があるんですが、いかがですか?
あ、煙が大丈夫だったら、ですが」

「全然おっけーです」

まさか焼き肉に誘われるなんて思わなかったが、私もそれくらい食べたい気分だ。
行き先が決まり、ふたり揃ってマンションを出た。

陽川さんが連れてきてくれたのは、タクシーで十分ちょい行ったところにある、隠れ家的な焼き肉屋だった。
七輪で焼く店らしく、店内は煙が充満している。
尋ねられたのも納得だ。

「なに、頼みます?」

「そうですね……」

カウンターに座り、肩を寄せあってメニューを見る。

注文を済ませ、先に出てきた飲み物で乾杯する。
陽川さんはビール、私はレモンサワーだ。

「先ほどはお疲れ様でした」

「お疲れ様です」

グラスをあわせながら、あのパーティへの参加をお疲れ様という彼がおかしくて、くすくすと笑っていた。

「僕は鹿野谷に無理やり連れていかれたんですが、ええっと……」

そこでまだ、私は彼に自己紹介していなかったと気づいた。

「夏初です。
夜桜夏初」

「夏初さん。
夜桜なのに夏なんですね」

彼が初対面の方なら誰でも抱く疑問を口にする。

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