黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
こうやって選択肢を提示してくれるのは嬉しいが、次々に女性が好みそうな店が出てきて慣れている感じがした。

「そう、ですね」

……やっぱり、そうだよね。

別に彼に清廉潔白さを求めていたわけではない。
それでも場数を多く踏んでいそうな雰囲気に少し、失望していた。

「別に僕は、女性なら誰でも口説いているわけではないですよ」

階数表示を眺めながら彼がぽつりと呟き、顔が上がった。

「仕事柄、付き合いやなんかでいろいろな店に行くんです。
それで知っている店が多いだけです」

「……すみません」

私が勝手に評価を落としているから、怒っている。
そう悟って自然と口から謝罪の言葉が出ていた。

「あっ、別に怒ってなどいないですよ!」

そのタイミングで一階に到着し、ドアが開く。
扉を手で押さえた彼に促され、先に降りた。

「確かになにも見ずにすらすらと、女性とふたりで行くのによさそうな店が出てきたら誰でもそうなります」

すぐに彼が並んでくる。
こうやって私の気持ちを言語化できるのは、弁護士という仕事柄だろうか。

「こちらこそ不快な思いをさせたのなら謝ります」

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