黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「はい。
夏初って四月の異名なんですよ」

鹿野谷さんに口説かれたときは誤魔化した由来が、するりと私の口から出てくる。
それくらい、陽川さんには気を許していた。

「ああ、だから。
でも、四月なのに夏って面白いですね」

「そうなんですよ!
父が、姓が夜桜だからどーしても四月って名前をつけたかったらしくて。
でも、卯月って普通じゃないですか。
それで調べまくって夏初って出てきて、これだ!ってつけたそうなんです」

名前の由来を聞いたとき、私はこんなに父に愛されていたのだと誇らしくなった。
だからこの名前は私にとって大事なものだし、信頼の置けない人に軽々しく由来を説明する気もない。

「へー、素敵なお父様ですね。
だからこんな素敵なお嬢さんに育ったのかな」

眼鏡の向こうで目を細め、彼が眩しそうに私を見る。

「えっ、あっ、素敵だなんて、そんな」

おかげで、意味もなく落ちかかる髪を耳にかけていた。

冷たいレモンサワーをひとくち飲んで気持ちを落ち着け、再び口を開く。

「この話には実は、オチがあってですね」

「オチが?」

陽川さんはジョッキを口に運びかけて、止めた。

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