黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
晴貴さんの後ろで女性事務員が申し訳なさそうに手をあわせた。

「ごめんね。
私が止めに入れればよかったんだけど」

その言葉にううんと首を横に振る。

「陽川先生を呼んできてくださり、ありがとうございます」

止めに入って無駄に終わるくらいならいいが、彼女にも被害が及ぶ可能性もある。
私だってきっと、誰かを呼びに行っていただろう。

「愚息が本当に申し訳ありません」

「いえ!
鹿野谷先生が悪いわけではないので!」

所長にまで謝られ、恐縮してしまう。

「相手が息子でも庇うつもりはありません。
遠慮なく訴えてください」

「えっ、いえ!
キスされたわけではないですし!」

そこまでする必要はないと慌てて断ったものの、なぜか周囲がざわついた。
特に、女性陣が。

「口説くまではギリ許すけど」

「キスしようとしたんだ、さいっていっ」

「夜桜さん。
強制わいせつで訴えよう?」

若手女性弁護士など、私の手を取って勧めてくる。

「バカ。
未遂で強制わいせつは無理だろ。
暴行だ」

しかしすぐに、呆れ気味に男性ベテラン弁護士から修正が入った。

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