黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「えー。
未遂でも心に負った傷はそれくらい深いですー」

立ち上がった彼女が不満げにベテラン弁護士に抗議する。

「わかるけど成立するかどうかは別問題だ」

全員の口からはぁーっと大きなため息が落ちた。

「では、鹿野谷先生。
憲吾先生に対して訴訟を起こしますがよろしいですか」

すーっと抑揚のない声が響き、誰もが所長に尋ねた晴貴さんに注目していた。

「ええ。
あのバカ息子は一度、痛い目を見ないと学習しないようですし。
陽川先生には迷惑をかけますが、徹底的にやってやってください」

「わかりました」

重く晴貴さんが頷く。

「……僕の夏初に手を出したこと、一生後悔させてやる」

直後、うっすらと笑った彼に誰もが怯えていた。

騒動のせいでなし崩しに私の歓迎会は終わってしまった。

「ステーキ、楽しみにしてたのにゆっくり味わえなかった……」

帰りのタクシーの中、非常に残念で私の口からため息が落ちていく。
今日のメインはステーキと聞いて、飲み会でそんなものが出るんだと驚きつつ楽しみにしていた。

「明日、食べに連れていってあげるよ」

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