黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「異名って旧暦の四月のことなんで、今でいうと五月頃なんですよ。
だから夏の初めで夏初。
もう桜が咲いてないってがっかりしたんだって、落ち込みながら父が話してくれました」

これはもう我が家鉄板の笑い話で、よく話題になっては父が落ち込む。

「ふふ。
お父様には悪いですが、面白いですね」

小さく笑い、彼が今度こそジョッキを口に運ぶ。
その笑顔に――胸が、とくんとした。

「……そう、ですね」

もう酔ったかのように熱を持つ顔で俯き、レモンサワーをちびちびと飲む。

元カレの鳥越くんはこの話を聞いて、父をバカにして大笑いした。
しかし陽川さんの小さな笑いは愛しんでいるようで、これ以上ないほど私を嬉しくさせる。

そのうち、頼んだものが出てきて、陽川さんはてきぱきと七輪の焼き網の上にカルビからのせていった。

「話が少々戻りますが。
僕は鹿野谷から無理やりあそこへ連れていかれたんですが、夜桜さんも同じような理由なのでは?」

私が下の名前まで明かしたにもかかわらず、陽川さんは律儀に名字にさん付けで呼んだ。
そういうところはとてもきちんとしていて、立派な紳士だ。

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