黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
刺すような視線に耐えかね、最若手の女性弁護士――大内(おおうち)先生がおそるおそる口を開いた。

「ふうん。
あの憲吾先生が謝るわけないだろ。
つまらない話はするな」

「す、すみません!」

栗下先生が小さくなって頭を下げ、気の毒になった。

「陽川先生はどうされたんですか」

微妙になった空気を変えるように、斉藤さんが晴貴さんに声をかけた。

「ああ、そうだ。
夏初、コピー頼める?
休憩終わってからでいいから」

「あっ、はい!
わかりました」

にっこりと笑って差し出された書類を受け取る。

「じゃあ、頼んだよ。
君たちも無駄な話をしている暇があるのなら、一件でも多く事例を読んだらどうだ?」

「は、はいっ!」

晴貴さんから冷たい視線を送られ、先生方はビシッと姿勢を正した。

ドアが閉まって足音が遠ざかっていき、全員がほっと息をつく。

「お、おっかなかった」

カップを口に運んだ栗下先生に至っては手ががたがたと震えていた。

「てか、告げ口するなよ」

「だって」

不満げに栗下先生からじとっと睨まれ、大内先生が唇を尖らせる。

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