黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
中堅の、晴貴さんと年もあまり変わらない先生方は大部屋でパーティション区切りの半個室だから、どれだけ彼が期待されているのかわかる。

「夜桜です。
コピーをお持ちしました」

「入って」

ノックをするとすぐに中から返事があった。

「失礼します」

「ああ、ありがとう」

部屋に入ると机を回ってきた晴貴さんが書類を受け取ってくれる。

「助かったよ」

なぜか勧められ、応接セットのソファーに座る。

「憲吾先生の件だけど。
証拠も揃ったし内容証明を送ろうと思う」

訴えるというのは感情的になっていたあの場だけで、あとで冷静になればそこまではしないのではないかとどこかで思っていた。

「あの。
そこまでしなくてもいいんじゃないでしょうか……?」

晴貴さんのおかげで心の傷は癒えたし、所長も厳重注意をしたと聞いた。
憲吾先生は事務室に出入り禁止となり、女性陣からは目の敵にされている。
それなりの罰は喰らっているので私としてはもう許してあげてもいいのではという気になっていた。

「栗下先生に許してやれと言われたからか」

彼の声がワントーン低くなり、ぎくしゃくと顔を見上げる。

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