黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
こんな本音を言ったのは、彼がどこか気取らない空気を醸し出しているからかもしれない。
もし引かれたとしても、そのときは彼とはあわなかったというだけだ。
……少し、残念ではあるものの。

「いいですね。
近くに遅くまでやってる焼き肉屋があるんですが、いかがですか?
あ、煙が大丈夫だったら、ですが」

「全然おっけーです」

まさか焼き肉に誘われるなんて思わなかったが、私もそれくらい食べたい気分だ。
行き先が決まり、ふたり揃ってマンションを出た。

陽川さんが連れてきてくれたのは、タクシーで十分ちょい行ったところにある、隠れ家的な焼き肉屋だった。
七輪で焼く店らしく、店内は煙が充満している。
尋ねられたのも納得だ。

「なに、頼みます?」

「そうですね……」

カウンターに座り、肩を寄せあってメニューを見る。
店内はカウンターと簡素なテーブル席になっており、昔の扇風機などが飾ってあって昭和レトロな雰囲気だ。

注文を済ませ、先に出てきた飲み物で乾杯する。
陽川さんはビール、私はレモンサワーだ。

「先ほどはお疲れ様でした」

「お疲れ様です」

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