黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
頭を突き合わせ、一緒に書類をのぞき込む。

「まず……」

指さしひとつずつ、晴貴さんが説明してくれる。
やたらと「検討する」「場合によっては」という文言が多く、法的根拠も薄く、いかにすかすかな勢いだけの文章がよくわかった。

「確かにこれはダメですね」

悪いが私でももう少しマシな文章が書ける気がする。

「だろ?
こんなふざけた提案してきたんだ、和解は蹴るということでいいな?」

私の意思を確認するように、晴貴さんがレンズ越しにじっと見つめる。

「はい。
徹底的にやってください」

私は力強く、頷いた。



その後、篠木さんは完全に事務室から閉め出された。
所長が彼女のIDでは事務室に入れないようにしたのだ。

『最初からこうしておくべきでした。
すみません』

所長は私が発作を起こしたのを知ったあと詫びてくれたが、悪いのは決まりを破った篠木さんだ。

晴貴さんに頼まれた会議室の片付けを終わらせ、事務室へ戻ろうとしたところで憲吾先生がこちらに向かってきているのが見えた。
避けようと後ろ手で今出てきた会議室のドアノブを掴み、開けようとしたが。

「なあ」

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