黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
それよりも早くあちらが気づいてしまった。

彼が会議室のドアを開け、強引に私を中へと連れ込む。

「こっちが示談で済ませてやるって言ってるのに、なんで蹴ったんだ?」

高圧的に憲吾先生が私を見下ろす。
歓迎会でのキス未遂の件で示談を蹴ると決めたのは晴貴さんだが、同意したのは私だ。
憲吾先生が謝罪してくれれば示談に応じる気でいたが、向こうから提案された内容からは金を払ってやるから黙れという空気が感じられ、許す気がなくなった。

「金なら払ってやるって言ってるのに、なにが不満なんだ?」

手が震え、呼吸が浅く速くなっていくのを感じる。
しかしこんな人に負けたくない。
目を閉じて大きく深呼吸し、強い意志で憲吾先生を睨みつけた。

「私が欲しいのはお金ではなくて憲吾先生の謝罪です」

「謝罪?
オレは悪くないのになんで謝らなきゃいけないんだよ」

彼はかなり不服そうで、話しあうというのがまずできないのだと悟った。

「オレはオマエのためを思って言ってやってんの。
同じ事務所内で争ってるとか、オマエも居づらくなるだろ?」

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