黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
晴貴さんに軽蔑するような視線を送られた憲吾先生が声を荒らげ、心臓が縮み上がった。

「どこがですか。
まともな弁護士ならこんな依頼、受けません。
事務所の信用に関わります」

「だからミチルは横領なんてしてないって言ってるだろ!」

その言葉でほぼその場にいる全員が状況を把握した。
いや、うすうす憲吾先生が篠木さんに色目で頼まれて受けたんだろうなとは思っていたから、確定したというべきか。

「裏は取ったんですか。
証拠は?」

「彼女がしてないって言ってるからしてないんだ」

「当事者の証言だけで証明できると思っているんですか。
あなた、本当に弁護士ですか」

晴貴さんの追求は容赦ない。
どんどん憲吾先生を追い詰めていく。

「あきらかに篠木さんがやっていないという証拠があるならまだしも、夜桜さんが争っているのに疑いのある人間の依頼を受けるなど、正気ですか」

「うぐっ。
だから……ミチルはやってないから問題ない」

苦しげに憲吾先生が同じ言葉を繰り返す。

「ああ。
もしかして」

一歩、晴貴さんは憲吾先生へと距離を詰めた。

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