黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「こちら側の情報を探って、夏初に罪をなすりつけようって魂胆ですか」

完全に醒めた目で晴貴さんが憲吾先生を見下ろす。

「もう、弁護士辞めたらいかがですか」

感情のない淡々とした声は、反対に恐怖を掻き立てる。
憲吾先生はとうとう真っ青な顔でなにも言わなくなった。

来たときとは反対にすっかり意気消沈してふらふらと憲吾先生は事務室を出ていった。

「騒がせて申し訳ない」

ひとり残った晴貴さんが丁寧に頭を下げて私たちに謝ってくれる。

「いえ、悪いのは陽川先生じゃないので。
どうせいいところ見せようと思って事務室に来たんでしょうが、裏目に出ましたね」

呆れるように斉藤さんが言い、失笑が起きた。
どうして憲吾先生か晴貴さんの部屋ではなくわざわざ事務室に来て言い争っているのだろうとは思っていたが、そういう意図だったのか。

「ほんと、いい迷惑ですよ」

「憲吾先生、女に甘いからなー」

本人のいないところで言いたい放題だが、あのように迷惑をかけられていたら文句を言いたくなる気持ちもわかる。

「本当に申し訳ない。
所長からも厳重に注意してもらうようにする」

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