黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
グラスをあわせながら、あのパーティへの参加をお疲れ様という彼がおかしくて、くすくすと笑っていた。

「僕は鹿野谷に無理やり連れていかれたんですが、ええっと……」

そこでまだ、私は彼に自己紹介していなかったと気づいた。

「夏初です。
夜桜夏初」

「夏初さん。
夜桜なのに夏なんですね」

彼が初対面の方なら誰でも抱く疑問を口にする。

「はい。
夏初って四月の異名なんですよ」

鹿野谷さんに口説かれたときは誤魔化した由来が、するりと私の口から出てくる。
それくらい、陽川さんには気を許していた。

「ああ、だから。
でも、四月なのに夏って面白いですね」

「そうなんですよ!
父が、姓が夜桜だからどーしても四月って名前をつけたかったらしくて。
でも、卯月って普通じゃないですか。
それで調べまくって夏初って出てきて、これだ!ってつけたそうなんです」

名前の由来を聞いたとき、私はこんなに父に愛されていたのだと誇らしくなった。
だからこの名前は私にとって大事なものだし、信頼の置けない人に軽々しく由来を説明する気もない。

「へー、素敵なお父様ですね。
だからこんな素敵なお嬢さんに育ったのかな」

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