黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「お母さんよー」

きちんと頭を下げ返した父とは反対に、母は軽い調子でひらひらと手を振った。

「ねえねえ、陽川さんのお仕事は?
どこで知り合ったの?」

矢継ぎ早に母が聞いてきて、早くも第二ラウンドの火蓋が切って落とされる。

「弁護士をしております。
こちら、どうぞ」

名刺入れから名刺を引き抜き、晴貴さんは両親の前に滑らせた。

「ああ、やっぱり」

「やっぱり?」

父のひと言に母が反応したが、私もなにがやっぱりなのか気になった。

「本社の顧問弁護士さんだ」

「本社というと?」

晴貴さんには父は会社員だと説明はしてあるが、どこの会社に勤めているかまでは話していない。

「わたくし、こちらに勤めておりまして。
いつもお世話になっております」

今度は父が晴貴さんの前に名刺を滑らせてくる。

「ああ!
こちらこそ、お世話になっております」

気づいたら個室の中はすっかり会社の接待の雰囲気になっていた。
おかげで。

「お仕事に来たんじゃないんだけどー?」

母が不満を漏らし、苦笑いしかできなかった。

美味しい料理を食べながら、なおも母が探りを入れてくる。

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