黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
その場にいた全員が同意だと頷く。

「それを言うなら夜桜だって一緒だろ。
横領の容疑がまだ、晴れたわけじゃない」

現実を見た気がして、急に目の前が真っ暗になった。
晴貴さんはもちろん、所長も私はやっていないと信じてくれている。
他の職員も私が容疑を晴らすために戦っているのは知っているが、横領犯扱いなどしない。

しかし世間的にはまだ、私は会社のお金を横領したと思われているのだ。

「……夏初を一緒にしないでもらいたい」

ゆらりと、晴貴さんから怒りが立ち上る。

「夏初は無実です。
すでにその証拠も揃っています」

「だからミチルもやってないって言ってるだろ」

晴貴さんと憲吾先生が睨みあい、一触即発の空気になる。

「篠木がやったかやってないかとかどうでもいい」

頭半分下にある憲吾先生を見る晴貴さんの、眼鏡の奥の目は、視線だけで人を殺せそうなほど殺気立っていた。

「あなたは夏初を侮辱した。
この罪、きっちり償ってもらいますよ」

腹の底に響く晴貴さんの声がその場を支配し、一切の音が消えた。
誰もが息を詰め、成り行きを見守る。
静寂を破ったのは憲吾先生ではなく、電話だった。

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