黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
第八章 夏初さんとは結婚を前提にお付き合いさせていただけたら
「ねえ夜桜。
これ、どうしたらいいの?」

声をかけられて、緊張で喉がひゅっと息を吸い込んだのがわかった。
自分に言い聞かせ、ゆっくり息をしようと心がける。
しかし相手は私のそんな様子に気づかず、話し続けた。

「てか、私忙しいんだから夜桜、やっておいて」

キーボードの上に投げ出された書類を無言で見つめる。
だんだんと指先が冷え、周囲の声が遠くなっていく。
自分がちゃんと、呼吸ができているのか自信がない。

「なにやってるの」

軽く背中を叩かれ、意識が目の前に戻ってきた。

「篠木さん。
それはあなたの仕事でしょ?
わからないなら憲吾先生に聞いて。
あなたはここの事務員じゃないんだから」

斉藤さんに目配せされ、近くにいた女性事務員が私を立たせる。
そのまま支えて、奥の若手先生たちのスペースへ連れていった。
大内先生が立ち上がって椅子を空け、私を座らせてくれる。

「大丈夫?」

私の前にしゃがみ、両手を握ってくれた大内先生に黙ってうんと頷く。

「オレ、なんか飲み物取ってくる」

すぐに栗下先生がスペースを出ていった。
< 206 / 287 >

この作品をシェア

pagetop