黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
眼鏡の向こうで目を細め、彼が眩しそうに私を見る。

「えっ、あっ、素敵だなんて、そんな」

おかげで、意味もなく落ちかかる髪を耳にかけていた。

冷たいレモンサワーをひとくち飲んで気持ちを落ち着け、再び口を開く。

「この話には実は、オチがあってですね」

「オチが?」

陽川さんはジョッキを口に運びかけて、止めた。

「はい。
異名って旧暦の四月のことなんで、今でいうと五月頃なんですよ。
だから夏の初めで夏初。
もう桜が咲いてないってがっかりしたんだって、落ち込みながら父が話してくれました」

これはもう我が家鉄板の笑い話で、よく話題になっては父が落ち込む。
けれどそういう父が私は大好きだし、結婚するなら父のような人がいいと思っていた。

「ふふ。
お父様には悪いですが、面白いですね」

小さく笑い、彼が今度こそジョッキを口に運ぶ。
その笑顔に――胸が、とくんとした。

「……そう、ですね」

もう酔ったかのように熱を持つ顔で俯き、レモンサワーをちびちびと飲む。

元カレの鳥越くんはこの話を聞いて、父をバカにして大笑いした。
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