黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
わかっていたが事務室に残ったのは、まだ自分の仕事に自信がないからだ。
いまだ、斉藤さんや他の事務員によく質問をする。
こんな状態でひとり離れて仕事ができるのか、不安だった。

「そう、ですね。
考えてみます」

けれど篠木さんから声をかけられるたびに今日のように発作を起こしていれば、周りに迷惑をかける。
少し、考えたほうがいいのかもしれない。

今日はこのまま、晴貴さんの部屋で仕事をした。

「夏初。
今転送したメール、訳頼めるか」

「はい、わかりました」

受け取ったメールを確認し、自分で作った英和辞典を別画面で開く。

一応、ビジネス英語はできるが、専門用語は自信がないし法律関係は正確性が求められる。
なので私専用の辞書を、表計算ソフトを使って作った。
注意点や気づいたことなども入れてある。

「へえ。
それ、いいな」

集中していたら顔の横から声が聞こえ、手が止まる。
晴貴さんがソファーの背から身を乗り出すようにして、私のパソコンの画面をのぞき込んでいた。

「その辞書、夏初が作ったの?」

彼がなにを指しているのか考えて、サイド画面で表示している辞書だと気づいた。

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