黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「はい。
微妙なニュアンスのものも多いし、間違えないようにと思って。
といってもまだ、完全ではないんですが」

基本的な用語と仕事中に引っかかった言葉だけなので、法律用語を全部網羅しているとは言い難い。

「いや、海外関係の仕事をしている弁護士や事務員ならそれ、絶対欲しがるよ」

「言い過ぎですよ」

彼がお世辞を言っているのはわかっているが、それでも褒められると嬉しくて頬が熱くなっていく。

「そんなことない。
斉藤さんに見せてみなよ。
絶対、コピーもらえる?って言われるから」

彼は自信満々だが、私の手製辞書にそこまで価値があるなんて思えない。
……などと謙遜していたが、のちに業界の出版社から声がかかって驚いた。

メールの訳も終わり、ちょうど届いた手紙を仕分けていく。

「あ……」

その書類を見て眉間に力が入った。
ざっと目を通すとますます不快になっていく。

「……前の会社から和解の提案書が届いてます」

「見せて」

私が立ち上がるより早く、晴貴さんがやってきて書類を受け取る。
私の前で彼が確認し終わるのを黙って待った。

「相手の弁護士、実は憲吾先生なのかな」

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