黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「は?」

おかしそうにくつくつと喉を鳴らしている彼がなにを言っているのかわからなくて、真顔になった。

「いやー、こんな酷い和解提案書が書ける弁護士が憲吾先生の他にもいたとは驚きだよ」

完全に晴貴さんは呆れているが、酷い内容と思った自分の感覚が間違っていなくて安心した。

「詳しく説明するな」

書類をテーブルの上に置き、晴貴さんが丁寧に説明してくれる。

「未払い残業代は払うが、遅延損害金は無効……っていうか、踏み倒す気だな。
まあ、ここまではよくあるけど」

晴貴さんは不思議でもなんでもないって感じだが、踏み倒しがよくあってはいけないと思う。

「肝心なのは、ここ。
査問会なんて違法行為はやってない。
やってないのだから夏初に対するパワハラもありえない。
和解に応じるなら問題にしないが、応じない場合は守秘義務違反、名誉毀損等で反訴する……と、いうことだ」

会社の開き直りようにふつふつと怒りが湧いてくる。
もうかなり治まったとはいえ、ときどきあの日がフラッシュバックし、夜中に発作を起こしそうになって晴貴さんを心配させている。
まだ、薬も手放せない。

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