黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
ここまで人を追い詰めておいて、なかったことにしようなんて許せない。
しかも反対に訴えるって、なに?

「本気で私を訴えるつもりでしょうか」

「ただの安い脅しだ。
守秘義務違反って弁護士に相談することは当たらない。
名誉毀損も実際に査問会が行われた証拠はこっちで押さえてるんだ、言い逃れはできない」

きっと大丈夫だとは思っていたが、晴貴さんが反論してくれて安心する。

「だいたい、〝等〟ってなんだよ、〝等〟って。
なんか雰囲気で書いてるのがバレバレなんだが!」

耐えられなくなったのか晴貴さんが膝を叩いてゲラゲラ笑い出し、困惑した。
これってそんなに、酷いんだろうか。
確かに提示された条件は酷いけれど。

「ほんとにこれ書いたの、憲吾先生じゃないんだよな?」

笑いすぎて出た涙を、眼鏡を浮かせて指の背で拭い、晴貴さんは書類を改めて確認した。

「あー、あそこの法律事務所ね。
憲吾先生とオトモダチの」

晴貴さんの声には軽蔑が含まれているが、その気持ちはわかる気がする。

「しかしこれ、本当に典型的な悪い和解提案書の見本として、栗下先生たちの教材にしたいレベルだな」

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