黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
また書類に目を通し、晴貴さんがおかしそうに笑う。

「えっと……。
後学のために、しっかり読んでもいいですか」

「いいが、不快になるだけだぞ?」

内容が内容だけに晴貴さんが心配そうに聞いてくる。

「その、陽川先生が大笑いするほどの酷い和解提案書に興味があって」

教材にしたいレベルで最悪だと言っていた。
これは是非とも、きちんと読んでみたい。

「夏初は勉強熱心だな。
よし、僕が丁寧に解説してやる」

頭を突き合わせ、一緒に書類をのぞき込む。

「まず……」

指さしひとつずつ、晴貴さんが説明してくれる。
やたらと「検討する」「場合によっては」という文言が多く、法的根拠も薄く、いかにすかすかな勢いだけの文章がよくわかった。

「確かにこれはダメですね」

悪いが私でももう少しマシな文章が書ける気がする。

「だろ?
こんなふざけた提案してきたんだ、和解は蹴るということでいいな?」

私の意思を確認するように、晴貴さんがレンズ越しにじっと見つめる。

「はい。
徹底的にやってください」

私は力強く、頷いた。



その後、篠木さんは完全に事務室から閉め出された。
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