黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
そんなはずはないと信じたが、すぐにへし折られた。

「私としては夏初さんを信じたい。
けれどお見せできませんが、証拠も複数添えられていて……」

言いにくそうに所長が説明してくれ、目眩がした。
どうしてやってもいない証拠があるのだろう。
そこからすでにわからない。

「昼過ぎに憲吾が来ます。
それまでに夜桜さんから話を聞きたい」

所長に重々しく言われ、私は頷いた。

個人情報に関わるからと相手の名前は教えてもらえなかったが、彼らはタワマンパーティで私と知り合ったと言っているという。

「いわゆるタワマンパーティに出席したことはあるのですか」

「……あり、ます。
でも、一回だけです」

変に隠しても状況を悪くするだけだと、正直に答える。

「あるんですね」

所長に強調するように言われ、たった一回でもそういう女だとレッテルが貼られるのだと、軽率な過去の自分が嫌になった。

その後もいろいろ聞かれたが、どれもこれも心当たりがない。

「憲吾の話と食い違っていますね」

だいたいの話が終わり、所長がソファーに寄りかかって苦悩の濃いため息をつく。

「そうですよ。
夜桜さんがこんなこと、するはずがありません」

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