黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
……斉藤さんは信じてくれていたんだ。

目頭が熱くなったが、唇を引き締めて耐えた。

「すみません。
弁護士は疑うのが仕事のようなところもあるので」

さらに所長が詫びてくれ、彼も信じてくれていたのだと気づいた。
ただ、可能性を示す証拠があるから、慎重に判断しようとしただけにすぎない。

「わかっています。
でも、私は絶対にやっていません。
信じてください」

精一杯の気持ちで、ふたりに頭を下げた。

事務室へ行っても皆が仕事にならないからと所長室にいるように言われた。
周囲から疑惑の眼差しで見られないだけでありがたい。

「晴貴さんに連絡……」

携帯の画面に指を走らせかけて止まる。
今は大事な仕事の最中なのだ。
無用な心配はさせたくない。
どのみち戻ってきたら……もしかしたらそれよりも早く、連絡が行くかもしれない。
それまでは知らせずにおこうと決めた。

午後になり、約束の時間を三十分以上過ぎて憲吾先生は篠木さんを連れてやってきた。

「ひとりで来るように言ったはずだが?」

彼女の顔を見て不快そうに所長の片眉が上がる。

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