黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
しかし陽川さんの小さな笑いは愛しんでいるようで、これ以上ないほど私を嬉しくさせる。

そのうち、頼んだものが出てきて、陽川さんはてきぱきと七輪の焼き網の上にカルビからのせていった。

「話が少々戻りますが。
僕は鹿野谷から無理やりあそこへ連れていかれたんですが、つまならそうに窓の外を見ていた夜桜さんも同じような理由なのでは?」

私が下の名前まで明かしたにもかかわらず、陽川さんは律儀に名字にさん付けで呼んだ。
そういうところはとてもきちんとしていて、立派な紳士だ。

「あー、私の場合は少々、事情が違うというか」

そろそろ頃合いかとトングを握りかけたが、それよりも早く陽川さんが肉をひっくり返していく。

「違うというと?」

ほんの僅かだが彼の声のトーンが下がり、正直に告白すべきか悩んだ。
こんな理由を話したら呆れられるかもしれない。
けれど嘘をついて自分を偽るのは、嫌だった。

「同僚に連れてこられたまでは一緒なんですが、私はその、……彼氏を作ろうと思って」

「……は?」

トングで肉を持ち上げ、笑顔のまま彼が固まる。
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