黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
小さく咳払いして気を取り直し、彼はまたボイスレコーダーを操作して机の上に置いた。

『僕が彼女に会ったのは、あるタワマンで行われたパーティでした。
知人に連れられていったんですが、地味な僕には場違いではないかと思っていたら声をかけてくれて。
口下手な僕の話を熱心に聞いてくれました。
そのあとは……まあ、彼女に男にしてもらいましたよ。
結婚の約束をした頃に父親の会社が倒産して、お金に困っていると相談されてけっこうな額を融通しました。
けれどそのあとからぱたりと連絡が取れなくなって。
今思えばしきりと僕の会社の規模や経営状態を気にしてましたし、最初からお金目当てだったんでしょう。
しかもあとであんなパーティに参加していたと知って幻滅ですよ』

続いて全部で三人の証言が流されたが、どれも似たような内容だった。
そしてやっぱり、彼らの声に聞き覚えはない。

「知らない人です。
聞いたことのない声ですし」

所長がわかったと頷く。

「これは夜桜さんを騙る、別の人間の可能性はないのか」

「ない。
全員、夜桜の写真を見せたらこの女だと証言した」

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