黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
足もとから真っ暗な沼にずぶずぶと沈んでいく。
そのうち頭まで沈んでしまい、息ができなくなった。
苦しくて必死に手を伸ばしてもがく。
その手を誰かががしっと力強く掴んで私を引き上げた。

「夏初!」

晴貴さんの声が聞こえてきて、目を開ける。
視界に入ってきた彼は、心配そうに私を見ていた。

「発作を起こして倒れたんだ。
苦しいとかないか」

「……大丈夫、です」

私を起こそうと彼が出した手を、振り払う。
あんな私を見て軽蔑しているのではないかと怖くて、取れなかった。

「一度、休憩を入れるか日を改めるか……」

「いえ。
大丈夫ですので続けてください」

所長は私の体調を気遣ってくれるが、結論が先延ばしになるなんて耐えられない。

「わかった」

椅子に座った私をそっと、斉藤さんが支えてくれる。
その温かい手ですら、私の凍りついた心は溶けなかった。

「結論から言います。
今回の件、事実無根です」

「これだけ証拠があるのになに言ってるんだ?」

憲吾先生が晴貴さんに見下すような視線を送り、篠木さんもうんうんと頷いている。

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