黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~

「ミ、ミチル!
置いていかないでくれー」

半べそをかいて憲吾先生が篠木さんを追っていき、静寂が訪れる。

「じゃあ、夏初さんは結婚詐欺もやっていないし、そういうパーティも参加してない、まったくの濡れ衣だったということでいいですね」

「はい」

所長に確認され、はっきりと言い切った。

「鹿野谷先生には追って、処分を言い渡します。
このたびは愚息がご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。
また、私も仕事とはいえあなたを疑った。
本当に申し訳ありません」

「いえ、そんな!
頭を上げてください!」

所長から誠心誠意謝られて慌ててしまう。
もうとっくに自分で責任が取れる年になっている息子の責任を、親が感じる必要はない。
それに所長は責任者として、私を疑わなければならなかったのもわかっている。

「夜桜さんを本当につらい目に遭わせてしまった。
息子があそこまで愚かだとは思いませんでした。
弁護士、失格です」

厳しい所長の声は父親としてというよりも、同じ弁護士として軽蔑しているようだった。

「夜桜さんの事務所内での評価が落ちないように配慮します」

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