黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
いつの間にこんなの、覚えたんだろう。

「そういえばなんで、晴貴さんが帰ってきてるんですか。
出張中のはずなのに」

帰ってくるのは明後日のはずなのだ。
なんでここにいるのかわからない。

「あー……」

長く発し、気まずそうに彼が人差し指で頬を掻く。

「憲吾先生を嵌めたんだ。
動きが怪しいのは知ってたし、出張でいなくなればこれ幸いと動くだろうと思って。
裁判は本当。
でも、今日の午後は空けてあったんだ」

「……話してくれたらよかったのに」

「ごめん」

申し訳なさそうに彼は詫びてくれたが、そこまで怒っていない。

「……帰ってきてくれて、ありがとうございます」

甘えるように肩をぶつける。
ちゃんと私にピンチに間に合うように帰ってきてくれた。
それだけで嬉しい。

「明日のパーティは出席しないといけないから、また戻るけど。
今日は一緒にいるよ」

くしゃりと柔らかく、晴貴さんが私の髪を撫でる。
それだけで涙がじわりと浮いてきた。

「……はい」

湿りそうになる声を、鼻を啜って耐える。
――けれど。

「……僕と一緒のときくらい、我慢しなくていい」

< 233 / 252 >

この作品をシェア

pagetop