黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「え?
あれは僕個人の気持ちだけど?
それに〝結婚を前提に〟であって、結婚を決めたとは言ってないよ」

「うっ」

確かに晴貴さんの言うとおりなだけに反論しづらくなる。

「でも、母たちは私と晴貴さんが結婚すると思ってました」

たぶん今後、結納は、式はいつにするのだと母にしょっちゅう聞かれる未来が想像され、気が遠くなった。

「まあ、誤解させたのは悪かったけど、僕たちが本当に結婚すれば問題ないよね?」

レンズの向こうで目尻を下げ、彼がにっこりと笑う。
しかしその笑顔が胡散臭く見えるのは私の気持ちの問題だろうか。

「夏初は僕と結婚するのが嫌なの?」

私の目を見ず、助手席のヘッドレストについているモニターを見ながら彼が聞いてくる。
なんの偶然か、ちょうど結婚情報誌の宣伝が流れていた。

「嫌ではないですが、まだプロポーズされてないですし……」

なんとなく言葉を濁し、意味もなく突き合わせた指をもぞもぞと動かす。
こんなの、返事になっていないのはわかっていた。

「そうだね。
近いうちにきちんとプロポーズするから待ってて」

顔を近づけてきた彼が、ちゅっと私の耳の先に口づけを落とす。

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