黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「は?」

間抜けな顔をして警察官ふたりは私を見ているが、そんなに変なことを言っているだろうか。

「……わかった」

ため息をつき、晴貴さんが私に続いて立ち上がる。

「加害者役は私がやります。
問題ないですよね?」

「ええまあ、そちらがよろしければ」

警察官たちは戸惑っているが、なにか問題があるのだろうか。

「私が逃げられないように、憲吾先生がドアの前に立って」

晴貴さんと向かいあい、あの日の距離感を再現する。

「私が言うことを聞かないとわかって、後ろ手に鍵をかけました」

晴貴さんが律儀に、手を後ろに回して鍵を回す動作をした。

「それで危険を感じ、助けを求めようと大声を出したら手で口を塞がれて」

あの日と同じように口に手を当てられたがそれはフリで、きちんと私がしゃべれるように隙間が空けられている。

「押さえたまま身体を反転させて私の背後にまわり、反対の手が私を羽交い締めにしました」

晴貴さんの腕が私の身体に回ったが、ソフトだ。

「で、憲吾先生の手を……」

噛んだわけだが、晴貴さんの手を本気で噛むわけにはいかない。

「噛みました」

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