黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
桜光の双子の弟、桜青(おうせい)の顔を拭いてやりながら口ごもる。
隠しておけないのはわかっているが、正直に話すのも問題があるのだ。

「……今日、幼稚園で転んだって」

事実なので嘘は言っていない。
ただ、どうして転んだのか説明しないだけで。

「おーひ」

晴貴が桜光を抱え、膝の上にのせる。

「ここ、どうして怪我したんだ?」

「あのね。
やまとくんとぶつかった!」

無邪気に桜光が答え、終わったなと悟った。

「……ふーん。
やまとくん、ねぇ」

晴貴の声が一段、低くなる。

「桜光もやまとくんも前見てなくてぶつかっただけだから!
わざとじゃないから!」

早口で捲し立て、相手に非はなかったのだと強調した。
ちなみにちゃんと、幼稚園で事情は聞いている。
万が一にも相手が悪いのに隠していたりしたら、あとが怖い。

「じゃ、いいけど」

渋々な様子ながらも彼が怒りを引っ込めてくれてほっとした。
子供の小さなトラブルごときで訴訟を起こされても困るのだ。

結婚式からまもなく妊娠がわかり、双子と知ったときはふたりとも驚いたものだ。
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