黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
どきどきとうるさい鼓動はまるで、私に警告しているようだった。
ごくりと喉が、無意識に唾を飲み込む。

私の事情を聞いても陽川さんは軽蔑せずに怒ってくれた。
私はそんな彼が嫌いではない、むしろ――好意を抱いている。

それに陽川さんが彼氏になってくれれば、私をバカにした鳥越くんと篠木さんを見返せる。
だからこれは間違っていない。

本当にこれくらいで決めていいのかと囁く私を説き伏せ、彼に向かって手を伸ばす。
その手はまだ迷いからぶるぶると震えていた。

「よろしく、お願いします」

決意を込めて彼の腕を、強く握る。

「はい」

僅かに口角を持ち上げた彼の顔が、愉悦を含んでいるように見えた。

支払いは割り勘でと申し出たが、陽川さんがしてくれた。

「今日は夏初さんに僕のものになってもらう、必要経費なんで」

いたずらっぽく言った彼が、私の顔をのぞき込んでくる。

「僕はこのまま夏初さんを帰したくないんですが、……どうします?」

レンズの向こうから見つめる瞳は、私を試していた。
しかし、こうやって聞いてくれるあたり、彼を選んでよかったと思う。

「そう、ですね。
私も……陽川さんと一緒にいたい、です」

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