黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
所長の許可も出たし、今日はもう帰ろうと事務所を出る。
マンションに帰り着いた途端、気が抜けて座り込んでいた。

「夏初!?
大丈夫か!」

「だ、大丈夫です」

立ち上がろうとした私に手を差し出しかけて、晴貴さんがなぜか引っ込める。

「あのー?」

「夏初は、僕が遅くなって怒っているんじゃないのか」

「へ?」

どうしてそうなるのかわからなくて戸惑う。
少し考えて、私が彼の手を振り払ったのを気にしているのだと思い至った。

「あの、そうじゃなくて。
晴貴さんが私を、あの写真のような人間だと思ったんじゃないかと怖くて……」

だから素直に彼の手を取れなかった。
なのにこんな勘違いをしているとは思わない。

「僕はそんな人間だと思っていたのか」

彼の声には怒りと失望が混ざっていた。

「僕は夏初を信じてる。
夏初が黒でも白というのなら、僕が白にしてやる」

眼鏡の奥の目は強い意志で光っている。
そこまで私を信じてくれるのは嬉しいけれど。

「黒を白にするのはダメです。
憲吾先生と一緒になっちゃいます」

「そうだな、憲吾先生と一緒になるのは遠慮したい」

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