黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
それくらい、満ち足りていた。

「気持ちよかった、です。
陽川さんは?」

「僕も満足です」

幸せそうに彼が笑い、心の底から温かくなった。

後処理をした彼が、眼鏡を外してごろりと私の隣に寝転ぶ。

「眼鏡。
外さないんですね」

汚れるし、邪魔じゃないのかと気になった。

「あー……」

しばらく天井を見上げたあと、彼は寝返りを打って私を見た。
だが、距離が異常に近い。

「僕、目がかなり悪くてこれくらい近づかないと夏初さんの顔もよく見えないんですよね」

情けなく彼が笑い、先ほどまでの意地悪な彼とのギャップに心臓が撃ち抜かれた。

「えっ、あっ、そぅ、なんです、ね」

おかげで視線はあちこちへと向き、しどろもどろになって声はみっともなく裏返る。

「そうなんです。
だからないと困りますし、ゴムもつけられないですし」

「それは困ります……ね?」

「ええ、困るんです」

私からすればそれくらいの理由って感じだが、彼は深刻そうでそれくらい大変なのだろう。

「でも、一番は可愛い夏初さんの顔が見られないのは惜しいですからね。
もう、あんなに可愛く啼いてくれて……」

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