黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「僕、去年の年収だいたい、推定夏初さんの年収よりゼロがひとつ、多いです」

小声で話し、離れた彼はうんとひとつ頷いた。
彼がどれくらいを想定しているのかはわからないが、薄給の我が社基準でもかなりの額になる。

「だから、気にしなくていいですよ」

「……はい」

にっこりと彼が笑い、私は熱い顔で小さくなった。
だいたい、社長や御曹司が集うあのパーティにいた時点で、収入が私と同じレベルなはずがない。

私はオススメされたカクテルを、彼はグラスのスパークリングワインを頼む。
それに前菜の盛り合わせと生ハムを彼は追加した。

「ここの生ハムは絶品なんですよ。
ぜひ、夏初さんに食べていただきたくて」

そこまで言うなんてよっぽどなんだろうか。
期待が高まる。

飲み物が届き、小さくグラスをあわせた。

「今日も一日、お仕事お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

くーっと一気に彼がグラスを空ける。
その様子はよほどストレスが溜まっているんだろうなと感じさせた。

「すみません。
ちょっといろいろあったもので」

視線に気づいた彼が、はぁっと重いため息をつく。

「弁護士さんも大変、ですよね」
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