黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
私はおじさん社員がと愚痴っていればいいが、彼は他人の人生を背負っていると言っても過言ではない。
プレッシャーもかなりあるのではないだろうか。
「まあ、仕事自体はそこまで大変じゃないんですけどね」
彼が曖昧に笑い、察した。
きっと昨日の鹿野谷さん絡みじゃないだろうか。
「でも、こうやって夏初さんと会えたんで、元気になりました」
眼鏡の向こうで目尻を下げ、本当に嬉しそうに陽川さんが笑う。
あまりに眩しいその笑顔に目を細めていた。
すぐに頼んだ生ハムが出てくる。
「食べて食べて」
「はい。
じゃあ、いただきます」
勧められ、フォークを取る。
私が口に入れるのを陽川さんはわくわくして見ていた。
「えっ……!」
口に入れてまもなく、小さく声を上げて唇を手で押さえていた。
極薄の生ハムが口の中でふわりと溶けていく。
かといって味を感じられないとかではなく、ほどよい塩味と豚の脂のうまみを感じた。
「なんです?
これ」
生ハムだとわかっているが、それでも尋ねてしまう。
私が知っている生ハムとは別物だ。